原題:Waterloo Bridge
製作年:1940年
製作国:アメリカ
上映時間:92分
ジャンル:恋愛ドラマ
私のおすすめ度:★★★★☆

戦争は、愛の時間さえ容赦なく奪っていく。

作品解説・コメント

第二次世界大戦下のロンドンを舞台に、偶然の出会いから始まった恋が、時代の波にのみ込まれていく様を描いた不朽の名作。監督はマーヴィン・ルロイ、主演はヴィヴィアン・リーロバート・テイラー

物語はとっても非常にシンプルで、説明的な展開も少ない。それでも強く印象に残るのは、登場人物たちの感情が過剰に語られないからだと思う。

特にヴィヴィアン・リーは、表情や佇まいだけで不安や諦めをにじませ、言葉以上の説得力を持たせている。

一方で、現代の視点から見ると、女性の生き方や選択肢の少なさに違和感を覚える部分もある。ただ、その窮屈さこそが当時の現実であり、この物語に逃げ場のない重さを与えているとも言える。

見どころとしては、恋の始まりから終わりまでを、あえて短い時間の中に凝縮して描いている点にある。

出会いの高揚感から、不安、誤解、そして取り返しのつかない選択へと進む流れが非常に早く、観る側は感情を整理する間もなく物語に引き込まれていく。

ヴィヴィアン・リーの抑制された演技も大きなポイントだ。涙や激情に頼らず、視線や沈黙だけで心情を表現する芝居は、物語後半になるほど胸に刺さる。

そしてラスト。派手な演出を排し、静かな余韻だけを残す終わり方が、この映画を単なる悲恋ではなく、人生の一場面として記憶に残る作品にしている。

動画とあらすじ

第一次世界大戦下のロンドン。

バレリーナを目指す若い女性マイラは、休暇中の将校ロイと偶然出会い、短い時間の中で急速に惹かれ合う。しかし空襲と戦争の混乱の中で誤解が生じ、二人は引き裂かれてしまう。

生活のため、そして誇りを守るためにマイラが選んだ道は、やがて訪れる再会をより残酷なものへと変えていく。戦争という時代が、個人の人生にどれほど深い影を落とすのかを静かに描き出す物語だ。

作品データと雑感

《スタッフ》
監督:マーヴィン・ルロイ
製作:デヴィッド・O・セルズニック
脚本:S・N・ベアマン ほか
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
音楽:ハーバート・ストサート

《キャスト》
出演:
ヴィヴィアン・リー
ロバート・テイラー
ルシル・ワトソン

《こぼれ話・裏話》
本作はサイレント時代から何度も映画化されてきた物語だが、1940年版が最も完成度が高いと評価されている。
『風と共に去りぬ』直後のヴィヴィアン・リーが、あえて感情を抑えた役柄に挑んだ点も興味深い。
ラストの橋のシーンは、戦争映画ではなく「愛の映画」として語り継がれる理由のひとつになっている。

《原題の意味合いとは》
Waterloo Bridge はロンドンに実在する橋の名前であり、出会いと別れ、そして人生の分岐点を象徴する場所として描かれている。
原題を直訳せず「哀愁」とした邦題は、この作品の本質を非常にうまく言い表していると感じましたね。

《総評として》
派手な展開も、大げさな演出もないんだけど、それでも人生の歯車がほんの少し狂っただけで、すべてが変わってしまう現実を、静かに、そして深く描いた恋愛映画だと思う。代を越えて残り続ける理由が、観終わったあとにじわじわと伝わってくる一本ですな。

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