原題:The Peacemaker 製作年:1997年 製作国:アメリカ 上映時間:121分
ジャンル:アクション/ポリティカル・スリラー 私のおすすめ度:★★★☆☆/3.8点

冷戦は終わった。しかし“核の責任”は終わっていない。

作品解説とコメント

本作品が、真正面から扱っているのは、冷戦後に世界が直面した「核の後始末」という問題だと感じる。

明確な敵が消え、国家という枠組みが揺らいだあと、管理されないまま残された核兵器が新たな脅威となる。
その不安定さこそが、この映画の軸になっている。

物語は派手なアクションで進むが、根底にあるのは「核抑止力は本当に安全なのか」という問いだ。核は国家によって均衡が保たれるとされてきたが、国家が弱体化した瞬間、その論理は簡単に崩れる。

本作が描くテロは、思想よりも管理不全から生まれた災厄として描かれている点が印象的だ。

監督のミミ・レダーは善悪を単純化せず、犯人像も歴史と政治に置き去りにされた存在として描く。アメリカ映画でありながら、アメリカの正義を全面肯定しない距離感が、この作品に独特のリアリズムを与えている。

主演のジョージ・クルーニーニコール・キッドマンは、軍人としての現実主義と学者としての理想主義を象徴する存在だ。

武力か対話かという二項対立に明確な答えを出さない姿勢も含め、『ピースメーカー』は冷戦後の不安を娯楽映画の枠内で誠実にすくい取った一本だといえる。

動画とあらすじ

《ザックリあらすじ》
旧ソ連圏で発生した核事故を発端に、核弾頭の一部が行方不明となる。アメリカ軍のトムと核専門家ジュリアは、核拡散を防ぐため共同で調査を開始する。

やがて事態は国家間の問題を超え、個人の復讐と国際政治が絡み合う危機へと発展していく。

作品データ&豆知識

《スタッフ》
監督:ミミ・レダー
製作:ウォルター・F・パークス
音楽:ハンス・ジマー

《キャスト》
ジョージ・クルーニー
ニコール・キッドマン
マルセル・イウレシュ

《こぼればなし・裏話》
公開当時は「アクション映画」として消費されがちだったが、現在見ると冷戦後の不安をかなり率直に映し出している。9.11以前の作品でありながら、テロリズムの予兆を感じさせる内容でもある。

《原題の意味合いとは》
「The Peacemaker」という言葉は、平和を守る者というより、“強制的に平和を作ろうとする者”という皮肉を含んでいる。

核抑止という暴力的な前提の上に成り立つ平和は、本当に平和と呼べるのか。この映画は、その矛盾を最後まで解消しない。

《総評として》
『ピースメーカー』は、娯楽映画の顔をした冷戦後の政治的メモのような作品だ。単純な勧善懲悪を期待すると物足りないが、「平和は管理され続けなければ簡単に崩れる」という現実を提示する点で、今なお古びていない。

90年代という過渡期の不安を封じ込めた、静かに刺さる一本である。

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