
原題:Den 12. mann 製作年:2017年 製作国:ノルウェー 上映時間:92分
ジャンル:戦争/実録サバイバル 私のおすすめ度:★★★★☆/4.0
「銃を持たずに、命をかけた抵抗があった。」
じわじわ追い詰められる恐怖と、守るもののために選んだ逃亡劇。声にならない抵抗が、北の大地にあった。
作品解説・コメント
ナチス占領下のノルウェーを舞台にした、実話ベースの壮絶サバイバル劇。主人公は、仲間11人を失い、たった一人で極寒の山岳地帯を逃げ延びたレジスタンス兵、ヤン・バースタ。
スパイ映画のような諜報劇ではなく、“生き延びること”そのものが物語の中心に据えられている。
監督は『ベスト・キッド』や『シャドウハンター』のハラルド・ズワルトだが、今回のトーンはまったく異なり、静けさと過酷さがにじむ北欧映画らしい仕上がり。
主人公が辿る逃亡ルートは、まさに「人間の限界に挑む旅」。山での遭難、生死をさまよう孤独、そしてナチスからの執拗な追跡。体力だけでなく、精神までもが試される展開が続く。
雪と氷に閉ざされた風景が画面全体を支配し、追手の存在よりも“自然”そのものが最大の敵に見えてくる。そんななかで、ひとときの人間的なふれあいや助けが光る瞬間が胸を打つ。
感想として――この作品、まず派手さはない。でも、胸にずっしり残る。戦争映画だけど、戦闘シーンが主軸ではない。
サスペンスでもあるけど、ジャンルの枠に収まらない。むしろこれは、「人はどこまで耐えられるのか」という、生きることへの問いかけだと思う。
主演のトーマス・グルスタッドは決して大スターではないが、あの“傷だらけの目”だけで、すべてを語っている。静かに熱い、そんな映画やね。ちょっと地味やけど、観てよかったって思える一作やで。
動画とあらすじ
《あらすじ》
1943年、ナチス・ドイツに占領されたノルウェー。連合軍の支援を受けて上陸したレジスタンス活動家たちは、作戦に失敗し、次々とナチスに捕らえられていく。
だが、唯一生き延びた男がいた。名をヤン・バースタ。彼は単独で逃亡を開始し、スウェーデン国境を目指す。
足には凍傷、身体は満身創痍。氷雪と山岳の自然が牙をむき、ナチスの指揮官クルトは執念深く山狩りを続ける。命の灯を握りしめながら進むその旅路には、時折現れるノルウェー市民の善意と、絶望の中の希望が差し込む。
これは、実在のスパイが体験した“生と死”の物語。
作品データ
《スタッフ》
監督:ハラルド・ズワルト
製作:アスレ・トイエ、アレクサンダー・ロドニー
脚本:ペッテル・スカーヴラン
撮影:ゲイリ・ショー
音楽:クリスティアン・ヴィッベ
《キャスト》
出演:
トーマス・グルスタッド(ヤン・バースタ)
ジョナサン・リース=マイヤーズ(クルト・シュテルツナー)
マリー・ブロックフース
原題の意味合い
原題 「Den 12. mann」(読み:デン・トールヴテ・マン)は、ノルウェー語で「12人目の男」という意味です。
これは実際の事件に基づいた物語で、1943年、ノルウェーに上陸した12人のレジスタンス工作員のうち、11人がナチスに捕まり処刑され、生き延びた最後の1人=12人目が、主人公ヤン・バースタだったという背景から来ています。
つまり、このタイトルは彼が「最後の生存者」であり、「奇跡的に生き延びたひとり」であることを象徴的に示してるわけですね。
タイトルだけで、すでにドラマが詰まってる…渋いわあ。
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