植物学雑誌の 創刊に向けて走り始めた万太郎は、さっそく神田の大畑印刷所に向かう。そして、店主の大畑義平に石版印刷の見本を見せてほしいと頼んだ。

それは、原画を元に画工が石版に絵を描き写して印刷するもので、当時は図版描写に優れた画期的な印刷方法だった。

万太郎はその見本を見て、仕上がりのすばらしさを確認し、自分で石版に直接絵を描きたいので共に働かせてほしいと頼み込む。

おまけに技術を教えてもらう授業料も払うと言うと、大畑と妻のイチは驚きながら承諾した。

一方、寿恵子はダンスの練習を始めていたが、万太郎に会えず、寂しい思いをしていた。「なんで来られないのか聞きたい。 何してるか教えてほしいけど足を引っ張るのも嫌なの……!」

母まつは、寿恵子の万太郎への思いの深さに驚く。

そして、万太郎は昼間は大学に通い、夕方6時から12時まで印刷所で働くことになった。 その晩、石版を洗う砂を頭からかぶって帰宅した万太郎を見て、竹雄は怒りだした。

肺が弱かった万太郎が砂にまみれて働くことも、本来なら峰屋の当主たる万太郎が職人の見習いとして働くことも、竹雄には許せなかったのだ。

竹雄曰く、ちゃんと寝て、食べて、笑顔でいることを条件に万太郎の考えを受け入れ、もう当主とは思わないことにすると宣言した。

この日から万太郎と竹雄は、主従関係ではなく、対等な関係になった。

寿恵子は、その後高藤家に通い、ダンスの習得に苦戦していた。

西洋人のクララに臆することなく前向きにダンスに取り組む寿恵子がますます気に入った高藤は、寿恵子を人生のパートナーとして横浜の別宅に迎えたいと思っていることを寿恵子に申し入れた。

「じっくり考えてくれ。 舞踏練習会の発足式が終わったら、返事を聞かせてほしい」と。

変わって万太郎は、大学にいる間も雑誌の制作を着々と進めていた。だが、細田、柴、飯島らに原稿を書く気はなく、彼らは万太郎、藤丸、波多野たちを冷たい目で見ていた。

印刷所で雑用をこなしていた万太郎は手際もよくなり、画工職人の岩下定春(いわしたさだはる)から、石版印刷のやり方を教えてもらえるようになる。

万太郎は初めて石版にヒルムシロの絵を描いた。印刷してみると出来はいまひとつだったが、万太郎はうれしかった。

物を伝える手段として正確な絵を描くことこそ、万太郎のやりたいこと!

そのことを理解した大畑や岩下は、その情熱に魅せられていく。

ある日寿恵子は、ダンスのレッスンを終え、高藤とともに馬車で根津へ向かう途中で道に座り込んでいる万太郎と遭遇するが、思わず身を隠してしまう。

御者にどなられ、「ノアザミですき!」と笑顔で返す万太郎。

馬車の中では寿恵子が、流されていく自分のことを恥じていた。万太郎は、ノアザミを指でつつき、つぶやいた。

「早う……白梅堂に行きたいのう」なんて独り言!
嗚呼、なんて悲しい週末だ。

To be continued

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