
原題:Eastern Promises 製作年:2007年 製作国:イギリス/カナダ 上映時間:101分
ジャンル:クライム/スリラー 私のおすすめ度:★★★★☆/3.7点 観賞日:2026.01.23
静かな顔をした暴力が、いちばん怖い。
作品解説とコメント
デヴィッド・クローネンバーグ監督が、ロンドンのロシアン・マフィア社会に踏み込んだ重厚なクライムスリラーだ。
助産師アンナ(ナオミ・ワッツ)が、ある少女の遺した“手がかり”を追ったことから、裏社会の掟と沈黙にじわじわ巻き込まれていく。派手な銃撃で押すタイプじゃなく、会話と視線、距離感で緊張を積み上げていくのが上手い。
ただ、そのぶん空気は終始ひんやりしていて、後味も甘くない。救いを求める気分の日には、少し冷たく感じるかもしれない。
見どころは、説明しすぎないところ。刺青や所作、立ち位置だけで序列や“所属”が伝わってきて、観客もその共同体の空気に閉じ込められる。
ヴィゴ・モーテンセンの静けさは一貫して不気味で、優しさのように見える瞬間ほど警戒心が増す。さらに有名な公衆浴場のシーンは、演出の容赦のなさがピークに達する場面で、観ている側の体温まで下げてくる。
モーテンセンがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのも納得の存在感。
動画とあらすじ
《ザックリあらすじ》
ロンドンの病院で働く助産師アンナは、出産直後に亡くなった少女の“遺したもの”から身元を辿ろうとする。だが手がかりは、ロシアン・マフィアの顔役セミョンと、その周辺へとつながっていく。
運転手ニコライ、危うい後継者キリル。静かな親切の裏にある支配の構造が見えたとき、アンナはもう簡単には引き返せなくなる。
作品データ&豆知識
《スタッフ》
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:スティーヴン・ナイト
音楽:ハワード・ショア
《キャスト》
ニコライ:ヴィゴ・モーテンセン
アンナ:ナオミ・ワッツ
キリル:ヴァンサン・カッセル
セミョン:アーミン・ミューラー=スタール
《こぼればなし・裏話》
・2007年トロント国際映画祭で観客賞(Best Film)を受賞。
・ヴィゴ・モーテンセンは本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネート。
《原題の意味合いとは》
Eastern Promisesは直訳すれば「東(東欧)からの約束」。甘い誘い文句や“約束”の裏に、搾取や暴力の入口がある……という皮肉が、作品の空気とよく噛み合っている。
《総評として》
ロシアン・マフィアの怖さを、銃撃や派手な抗争じゃなく、沈黙と序列と“身体に刻まれたルール”で見せてくるのが、この映画のえげつなさやと思う。
しかも、単なる裏社会ものに見せかけて、実は「おとり捜査」的な派手さではなく、組織の内側に入り込む潜入捜査の緊張感で引っ張っていく構造が効いてる。
救いは薄めで空気も冷たいけど、その冷たさが最後まで途切れへんから余韻が残る。そんな中で、ナオミ・ワッツの美しさが妙に現実味を帯びていて、闇の濃さを際立たせる対比になってるのも印象的。
派手に盛り上げるより、じわじわ締め上げてくるクライムを観たい日に刺さる一本だった。
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