原題:Dear Comrades! 製作年:2020年 製作国:ロシア 上映時間:120分 
ジャンル:実話ドラマ/政治ドラマ 私のおすすめ度:★★★★☆/3.5点


信じ続けた国家が、ある日、母からすべてを奪った。

作品解説・コメント

この作品は、1962年、ニキータ・フルシチョフ時代のソ連で実際に起きた「ノボチェルカッスク事件」を題材にした実話ドラマだ。

「雪解け」と呼ばれた改革期の裏で、労働者の抗議は武力で封じられ、事件そのものが長年にわたって隠蔽されてきた。

本作が描くのは、体制に反抗する人間ではなく、むしろ国家を誠実に信じてきた側の人間だ。

共産党の地方幹部として規律と秩序を重んじてきた主人公は、娘の失踪をきっかけに、自分が支えてきた国家の冷酷な現実と直面することになる。

この映画が鋭いのは、主人公を単純な被害者にも、加害者にも描かない点にある。

信念を持って生きてきたからこそ、その信念が崩れたときの衝撃は大きい。 観終わったあと、静かな怒りと、どうしようもない喪失感だけが長く胸に残る一本だ。

動画とあらすじ

《あらすじ》
1962年、ソ連の工業都市ノボチェルカッスク。 食料価格の高騰と賃金カットに抗議した労働者たちのデモは、軍とKGBによって武力鎮圧される。

共産党の地方幹部として働く主人公は、体制側の人間として混乱の収拾に関わるが、その最中にデモへ参加した娘が行方不明になってしまう。

娘を捜す中で彼女が知るのは、事件をなかったことにしようとする国家の姿と、沈黙を強いられる人々の現実だった。

真実を知ることは、信じてきた世界を失うことでもある。 その選択を迫られる主人公の姿を、映画は抑制の効いた語り口で描き切る

作品データと豆知識

《スタッフ》
監督・脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー
脚本:エレナ・キセリョーワ
音楽:アンドレイ・パンコフ

《キャスト》
リュドミラ:ユーリヤ・ヴィソツカヤ
ヴィクトル:セルゲイ・エゴロフ
スヴェトカ:ユリヤ・ブロヴァ
*受賞歴 第77回ヴェネチア国際映画祭 審査員特別賞 受賞

《こぼればなし・裏話》
この映画が描く「ノボチェルカッスク事件」は、ソ連時代に長く公に語られることのなかった出来事だ。犠牲者の数すら公式記録から消され、関係者には沈黙が強いられてきた。

監督のアンドレイ・コンチャロフスキー自身も、この事件を若い頃から知っていたが、長年映画化できなかったという。モノクロ映像が選ばれたのも、単なる様式美ではなく「記録映画のような距離感」を意識した結果だと言われている。

《原題の意味合いとは》
原題の「Dear Comrades!」は、ソ連時代の演説や公的文書で頻繁に使われた呼びかけの言葉だ。

仲間意識や連帯を象徴する一方で、そこには個人を飲み込む体制の匂いも含まれている。映画を観終えたあと、この言葉は温かい呼びかけではなく、皮肉と哀しみを帯びた言葉として響いてくる。

《総評として》
本作は、声高に体制を告発する映画ではない。むしろ、国家を信じ、秩序を守ろうとした人間が、どのようにて切り捨てられていくのかを静かに描いている。

政治の映画でありながら、最後に胸に残るのは、ひとりの母親の喪失と沈黙だ。観る側に感情を強要しない分、その余韻は深く、長く残る。

爺さん頑張ってます!
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