
Portrait in Jazz – Bill Evans Trio
ポートレイト・イン・ジャズ
(録音日:1959年12月28日 リリース:1960年)
静けさの中に熱が宿る、ピアノトリオの新しい時代を切り開いた名盤。
解説・コメント
ビル・エヴァンスの音楽は「繊細で美しい」とよく言われるが、このアルバムもその代表格で、ひょっとしたらそれ以上に大きな意味を持つ。
ここから始まったのは“3人で作る音楽”という新しいスタイル。
ベースのスコット・ラファロは低音でリズムを刻むだけでなく、時にメロディを奏でて自由に動き回る。ドラムのポール・モチアンも同じで、ただ拍を刻むのではなく、音に色を添えるように絡んでくる。
そんなふたりに囲まれたエヴァンスは、ピアノをリードするのではなく、3人の呼吸を合わせて音楽を進めていく。このあたりが良いね!
この“会話するような演奏”は、それまでのジャズ・トリオにはなかったもの。だからこそ、後のピアノトリオの基本形として語り継がれる一枚になった。
おすすめは「Autumn Leaves(枯葉)」。普通ならピアノがテーマを弾くところだが、この録音ではラファロのベースが堂々とメロディを奏でる。聴いた瞬間に、従来のジャズとの違いを感じるはず。
全体的に静かなトーンなので、派手なジャズを好む人には少し物足りなく映るかもしれない。ただ、耳を澄ませて聴くほどに味わいが広がり、繰り返し手に取りたくなる一枚だ。
《聴きどころ》
『Portrait in Jazz』の魅力は、3人が対等にやり取りするアンサンブルにある。ピアノが語りかけ、ベースが応じ、ドラムがニュアンスを添える。そのやり取りはまるで友人同士の会話のように自然で心地よい。
バラードでは“間”の美しさが際立ち、余計な音がない分、ひとつひとつのフレーズに重みがある。速いテンポの曲では、エヴァンスのリズム感とラファロの俊敏なベースラインが絡み合い、緊張感を生み出していく。
単なる“きれいなピアノ”を超えた、三者三様の声がひとつに重なり合う瞬間こそが、このアルバムの真骨頂。
Track list & Personal
《Track list》
1.Come Rain or Come Shine – 3:23 (Harold Arlen, Johnny Mercer)
2.Autumn Leaves – 5:58 (Joseph Kosma, Johnny Mercer, Jacques Prévert)
3.Witchcraft – 4:34 (Cy Coleman, Carolyn Leigh)
4.When I Fall in Love – 4:57 (Victor Young, Edward Heyman)
5.Peri’s Scope – 3:14 (Bill Evans)
6.What Is This Thing Called Love? – 4:36 (Cole Porter)
7.Spring Is Here – 5:06 (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
8.Someday My Prince Will Come – 4:52 (Frank Churchill, Larry Morey)
9.Blue in Green – 5:24 (Bill Evans, Miles Davis)
《Personal》
Bill Evans(ビル・エヴァンス)– Piano
Scott LaFaro(スコット・ラファロ)– Bass
Paul Motian(ポール・モチアン)– Drums
《総評として》
『Portrait in Jazz』は、美しいピアノアルバムという枠を超えて、ピアノトリオという編成そのものを新しい次元に押し上げた作品。個人的にはかなりの評価をしたい。
私も当初は地味に感じていたが、繰り返し聴くうちに奥行きが増し、ジャズの奥深さを実感でききたな〜。
ちなみに、録音はニューヨークのリバーサイド・スタジオで一晩のセッション。短時間でここまで完成度の高い演奏を残したこと自体が驚きを感じた。
そして、そしてだ。このトリオはわずか2年後、ラファロの事故死によって解散を余儀なくされる。だからこそ、このアルバムは、3人の奇跡的な出会いを刻んだ、かけがえのない記録でもある。
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