
原題:The Apartment 製作年:1960年 製作国:アメリカ 上映時間:125分
ジャンル:ロマンティック・コメディ/ヒューマンドラマ 私のおすすめ度:★★★★☆/4.5
社会の皮肉を巧みに織り込んだ、甘くて切ないラブストーリー
作品解説・コメント
『アパートの鍵貸します』は、ビリー・ワイルダーの代表作ともいえるシチュエーションコメディ。10年温めたアイデアで、時代の流れにあわせてようやく映像化にこぎ着けた作品でもある。
一見すると恋と出世に振り回される男のドタバタ劇なんだけど、その奥には社会の縮図や孤独、そして“自分って何者なんだろう”って問いがしっかり描かれてる。
ビリー・ワイルダーの名人芸とも言える皮肉の効いたセリフ回しや、思わずクスッと笑っちゃう場面が随所にあるけど、観終わったあとにはなんとも言えない温かさが残るんだよね。
主人公バクスターを演じるジャック・レモンは、とにかく“いい人”。でもその“いい人”が時に周囲に利用されてしまう切なさがあって、こっちまで「頑張れよ…!」と応援したくなる。
彼が少しずつ自分の意思を持ち始める姿には、じんわりくるものがある。
一方、シャーリー・マクレーン演じるフランもまた、ただの恋に悩む女の子じゃない。笑顔の奥に、傷ついた心や迷いが見え隠れしていて、彼女が放つひとつひとつの言葉にリアルな重みがあるんだ。
そして、あのラスト良かったな!
静かにカードを配りながら、ぽつりと出てくる「うるさいわね」。この一言だけで、すべてが報われるような感動が押し寄せる。もう最高ですな!
動画とあらすじ
《あらすじ》
ニューヨークの大企業で働くバクスターは、少し頼りないけどどこか憎めないサラリーマン。出世のために、自分のアパートを会社の上司たちに“秘密の逢瀬の場”として貸している。
それがいつしか社内で都合のいい存在として扱われるようになってしまい、バクスターは内心モヤモヤ。そんな中、彼がずっと想いを寄せていた社内のエレベーターガール、フランが、なんと上司の愛人だったと知る。
しかもその恋がうまくいっていないどころか、彼女の心はボロボロ。バクスターはフランを救おうと決意し、自分のアパートを今度は“癒しと再出発”の場所として差し出す。
ふたりの距離は、少しずつ少しずつ縮まっていく。決して大げさじゃないけど、静かに心を揺さぶる──そんなラブストーリーだった。
作品データ
《スタッフ》
監督:ビリー・ワイルダー
製作:ビリー・ワイルダー I・A・L・ダイアモンド
脚本:ビリー・ワイルダー I・A・L・ダイアモンド
撮影:ジョセフ・ラシェル
美術:アレクサンドル・トローネル
音楽:アドルフ・ドイッチ
《キャスト》
C・C・バクスター(バド)/ジャック・レモン
フラン・キューブリック/シャーリー・マクレーン
J・D・シェルドレイク/フレッド・マクマレイ
レイ・ウォルストン
ジャック・クラスチェン
デビッド・ルイス