原題:Incendies 製作年:2010年 製作国:カナダ 上映時間:131分
ジャンル:戦争/ミステリー/ヒューマンドラマ 私のおすすめ度:★★★/3.5

過去を辿ることでしか、未来に進めないこともある。

作品解説・コメント

母の死から始まるこの物語は、予想もしない方向へ観る者を連れていく。

双子の兄妹が、残された手紙をきっかけに中東へ旅立ち、亡き母の“知られざる過去”をひとつずつ紐解いていく過程。その道筋には、戦争、沈黙、そして深い喪失が折り重なっている。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、何かを声高に主張するのではなく、淡々とした映像でじわじわと真実を突きつけてくる。静かな場面ほど心に刺さるという感覚が、見事に生かされている。

ラストに待ち受ける“真実”は、正面から受け止めるにはあまりにも重たい。でも、だからこそ深く記憶に残る。観終わったあと、どこか呆然としてしまう、そんな一作だった。

目を背けたくなる瞬間があっても、目を逸らしてはいけない。そんなメッセージが、全編に込められている。
ラストのオチは良く考えたもんだ!これには、脅かさせれって感じ。……..そして、なるほど!って感じた。

【見どころ & ポイント】
♪ 時系列が巧みに絡み合う構成が秀逸。過去と現在が交錯することで、母の歩んだ道のりが立体的に浮かび上がってくる。
♪ 戦争の残酷さを描きながらも、そこに生きた“ひとりの女性”の強さと沈黙が静かに響いてくる。
♪ クライマックスの展開は言葉を失うほど。伏線がすべて回収された瞬間、鳥肌が立つような衝撃が待っている。

動画とあらすじ

《あらすじ》
カナダに暮らすジャンとシモンの兄妹は、亡くなった母ナワルの遺言に衝撃を受ける。
渡されたのは2通の手紙――「生きている父」へ、そして「存在すら知らなかった兄」へ。

半信半疑のまま、彼らは母の故郷である中東へと旅に出る。だが、現地で触れる情報はどれも断片的で、曖昧で、時に胸を締めつけるようなものばかり。

母ナワルの人生が、政治的混乱と宗教対立に翻弄されていたことを少しずつ知っていくなかで、兄妹はひとつの「信じがたい答え」にたどり着く――。

作品データ

《スタッフ》
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ヴァレリー・ボーシャン
原作:ワジディ・ムアワッド(舞台劇『Incendies』)
製作:ルイーズ・マルレ、リュック・ダリル
撮影:アンドレ・テュルパン
編集:モニク・ダートゥワ
音楽:グレゴワール・エッツェル

《キャスト》
ナワル・マルワン:ルブナ・アザバル
ジャン・マルワン(娘):メリッサ・デゾルモー=プーラン
シモン・マルワン(息子):マキシム・ゴーデット
ノタリー(公証人):レミー・ジラール
アブ・タレク:アブドゥラ・エル・アクダール
シャムセディン:アレン・タッセル

【こぼれ話&舞台裏】
✴ 原作はレバノン系カナダ人の劇作家ワジディ・ムアワッドによる舞台劇『Incendies(火事)』。ヴィルヌーヴは戯曲の抽象性をリアルな映像で昇華させた。
✴ 撮影は主にヨルダンで行われ、現地の空気感を生かしたロケーションが物語にリアリティを与えている。
✴ 劇中で使われるレディオヘッド「You and Whose Army?」のシーンは、とにかく震える。映像と音が完璧に重なる名場面。
✴ この映画の成功が、ヴィルヌーヴをハリウッドに導き、『プリズナーズ』『メッセージ』『DUNE』へと繋がっていく。

爺さん頑張ってます!
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